有能な研修講師が使うソクラテス式問答法とは?受講者と上手く関わるコツ
会社で新人研修を行ったり、教育担当になったり、後輩から質問を受けたり…と、仕事をしていると人に何かを教えるという機会が増えてきます。
教える立場になれば誰しも一度は
「どんな研修をすれば受講者に満足してもらえるんだろう?」
「どんな伝え方をすればより良いコミュニケーションになるかな?」
と悩むことがありますよね。
そこで本記事では、研修講師などの教える側の立場の人に向けて、相手に物事を教える際に役立つ「ソクラテス式問答法」について、受講者と関わる際のコツもあわせてご紹介します。
研修講師が受講者と関わる前に…「アクティブリスニング」を知ろう

研修を行う際に、まず初めにおさえておきたいのは、研修は講師のみでは成り立たないということです。
話し手がいれば、もちろん聞き手も存在します。
いくら研修講師が完璧に準備をしても、双方の協力なくして研修は行えません。
研修を始める前に、お互いが気持ちよく研修に参加できるよう受講者に意識的に参加させることが重要です。
そこで受講者にまず伝えたいのが、アクティブリスニングという概念です。
アクティブリスニングとは
アクティブリスニング(Active Listening)とは、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャース博士が1957年に提唱したコミュニケーションの手法の1つで、日本語で「積極的傾聴」の意味にあたります。
ただ聞くのではなく、話し手のメッセージを聞いて理解することを意識的に行うプロセスを指します。
聞いていますよ、という姿勢を積極的に示すことで、円滑なコミュニケーションがとれ、研修をスムーズに進めることが可能になり、問題解決への気づきやより深い学びに繋がります。
アクティブリスニングの例
そのため、研修に参加する聞き手には以下のことが求められます。
- 肯定的な姿勢
- 相手を理解しようと努力する
- 会話の早い段階で肩入れをしたり意見をしない忍耐力
- 一時停止や短い沈黙を受け入れる姿勢(配慮)
研修講師が受講者と関わる際のコツは…「ソクラテス式問答法」を使う!

アクティブリスニングについて触れたところで、早速ソクラテス式問答法について説明します。
ソクラテス式問答法(Socratic method)とは、質問を繰り返すことで相手により深い思考を促したり、抱える問題の本質を見抜かせるコミュニケーション方法の1つです。
質問をすることで、多角的な視点から物事を考えさせ、他のアイデアや新しい気づきを得る効果もあります。
研修では、相手に一方的に知識を教えるだけではありません。
受講者自身に考えさせ、気づかせ、答えに導かせるためのサポートをするのも講師の役目。
こういったコミュニケーションに長けている講師の研修は、聞いている側の印象にも残りやすく、「多くを学べた有意義な時間だった」と感じてもらいやすいです。
質問の例
「どうしてそう思いましたか?」
「他にもっと良い案はありますか?」
「本当にそれが一番ベストな方法だと思いますか?」
研修を成功させるための6つの質問とは?

では、具体的にどんな質問をすれば効果的なのでしょうか?
ソクラテス式問答法で使われる質問=ソクラテスの質問(Socratic questioning)は、大きく分けて6つあると言われています。
- 概念を明確化する質問
- 仮説を深堀りする質問
- 根拠を問う質問
- 視点を変える質問
- 結果や影響に関する質問
- 質問返し
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ソクラテス式問答法①概念を明確化する質問
研修中はまだ知識が浅いため、ふんわりしたまとまらない考えのまま進んでしまうこともありますよね。
そんなときに、研修講師から「もっと教えて!」という質問をして掘り下げることで、受講者が理解したことや分からないことなどを気づかせることができます。
相手がなぜそう思ったのか?何が起因なのか?という考えを引き出すことで相手の質問意図の背景を明確にできます。
質問例
- どうしてそう思うんですか?
- それは具体的に何を意味しますか?
- それは今回学んだこととどのように関連していますか?
- 問題の性質は何ですか?
- ここまでで何を学んだか教えてくれますか?
- 例を挙げてくれますか?
- あなたが言っているのはAですか?それともBすか?
- つまりどういうことなのか簡単に説明できますか?
ソクラテス式問答法②仮説を深堀りする質問
その人の仮説に対してなぜそう思うの?と聞くことで、その考えに至った背景や考えの根底を探ることができます。
質問例
- どうしてそう思ったのか教えてください。
- どうやってその仮説を検証したり、反証したりできますか?
- では、~の場合はどんなことが予想されますか?
- Aさんの仮説に賛成ですか、反対ですか?
- それは常にこのケースに該当しますか?なぜその仮説がここに当てはまると思いますか?
ソクラテス式問答法③根拠を問う質問
相手(受講者や会社の部下、後輩)が抱える問題に対する状況の把握度や理解度、相手との認識のずれの改善を促すことができる質問です。
質問例
- どんな例が挙げられますか?
- どうしてそう思いますか?
- そう思った根拠は何ですか?
- その理由は何ですか?
- 他にどんな情報が必要ですか?
- その理由は適切ですか?
- なぜそのように思ったのか共有できますか?
- それが今回のケースにどう当てはまるのでしょうか?
- どなたか、Aさんの見解を支持するエビデンスを示すことができますか?
- どのような理由でその結論に至りましたか?
- それが本当かどうか、どうやって調べることができますか?
ソクラテス式問答法④視点を変える質問
多角的な観点から比較させたり、相手の立場に立って物事を考える際に有効な質問です。
質問例
- それは何を示唆していますか?
- 他にどんな問題が起こると思いますか?
- どんな効果がありますか?
- 代替案は何ですか?
- ~の場合はどうなると思いますか?
ソクラテス式問答法⓹結果や影響に関する質問
この質問は、物事の重要な決定前に再度論理的な思考を促す時に有効とされています。
質問例
- この質問を解決するにはどうすればいいのでしょうか?
- この質問は明確ですか?
- この質問は簡単ですか、それとも答えにくいですか?→それはなぜですか?
- この問題に答えるにあったって、他にどんな問題や懸念点が挙げられますか?
- どうしてこの問題が重要なんでしょうか?
- 他に根本的な問題は考えられますか?
ソクラテス式問答法⑥質問返し
問題全体について再考をさせることができる質問です。
研修の場面では、少し攻撃的な相手がいた際に、その発言をうまくかわし、トレーニングに集中させる際にも有効です。
質問例
- どうしてそう思ったのでしょうか?
- 質問の意図はなんですか?
- 効果がないと思うのはなぜですか?
- 〇〇は不必要とのことですが、その場合クライアントにとってどんな問題が起きますか?
- そう思った背景を皆さんにも説明していただけますか?(→全体で考えるテーマにする)
- 私がなぜ質問したか分かりますか?
有能な研修講師が使うソクラテス式問答法とは?受講者と上手く関わるコツ【まとめ】
本記事では、研修講師などの教える側の立場の人に向けて、相手に物事を教える際に役立つ「ソクラテス式問答法」について、受講者と関わる際のコツとあわせてご紹介しました。
受講者と関わる際に一番大事なこと
講師と受講者が気持ちよく研修に参加できるよう、受講者にアクティブリスニング(積極的傾聴)を意識してもらう。
研修や教育時には「ソクラテス式問答法」が有効
6つの質問で受講者の理解度を深め、研修の質を高めることが可能。
- 概念を明確化する質問
- 仮説を深堀りする質問
- 根拠を問う質問
- 視点を変える質問
- 結果や影響に関する質問
- 質問返し
もっと知りたい方向け!
メンタリストのDaiGoさんの著書『超客観力』でも、人生で成功しビジネスで大きな成果を出す人になるためのテクニックの1つとして、このソクラテス式問答法が紹介されていたのでご紹介します。
研修内容をより良くしたい、講師としてのコミュニケーションに不安があるという方は、ぜひ今後の研修や新人教育、講義などに活かしてみてくださいね!